第1回金融デザインセミナーは、日本初のソーシャルレンディングビジネスを展開しているmaneo㈱に妹尾社長にお越しいただき、「日本の金融とソーシャルレンディング」についてお話いただきました。 

 

本セミナーは2部構成にて進行しました。第1部では妹尾社長にプレゼンしていただき、第2部では妹尾社長にも加わっていただき、「貯蓄から投資へ促進するためには」というテーマで全員参加でのディスカッションを行いました。 

 

第1部の妹尾社長のご講演は3つのお話から成り立っていました。すなわち、現在の日本の姿、日本の金融の姿、そしてソーシャルレンディングについてです。 

 

初めに妹尾社長は日本の姿として、日本の高度成長を支えた民間貯蓄を金融機関が吸い上げて輸出産業に割り振る官僚主導体制、すなわち「1940年体制」(※1)についてご説明されるとともに、現在の日本の状況では1940年体制を維持することは不可能であることをご指摘されていました。理由として、製造業に関しては、新興国との競争激化により『国内製造・海外輸出』のモデルは崩壊している点、金融機関については、高度成長期のような大企業の資金ニーズはなく、そして、家計は少子高齢化に伴い貯蓄率は低下の一途になっている等を挙げられていました。 

 

次に日本の金融の姿についてです。日本の金融機関は「審査能力」と「商品開発能力」がないという二つの大きな問題を抱えています。さらに、年代別の資産の状況を見ると、約1500兆円もの金融資産のうち、900兆円以上を50代が保有しているという大きな偏りも存在しています。 

 

以上のように日本の姿、金融の姿を踏まえたうえで、いよいよ最後のソーシャルレンディングへのご説明に入ります。ソーシャルレンディングとは「お金が必要な人と投資したい人を銀行を介さずにマッチングするサービス」です。そして、maneo㈱はソーシャルレンディングを通じて①「『お金のある場所』から『お金が必要な場所』へ」、②「ちゃんとお金を回る仕組みを提供したい」を実現することを目的としています。 

 

では、なぜこのようなことを実現したいのでしょうか。その理由は初めに妹尾社長がご説明された「現在の日本の姿」と「日本の金融の姿」にあります。すなわち、銀行の資産は貸出が減少する一方で国債が増え、そして、日本の金融資産の6割以上を60代以上が保有しているという状況です。このような金融のミスマッチを解消する仕組みとして、ソーシャルレンディングが存在するのです。

 

maneo㈱の具体的な取り組みとしては、借入額が10万円から200万円までの個人向けローンであるパーソナルローンやスペシャルローンと呼ばれる特別なテーマ性のあるローン等(例えば、住宅ローンのつなぎ融資やフランチャイズ開業支援ローン)をご紹介されていました(詳細はmaneo㈱HPをご確認下さい)。

 

最後にお勧めの参考文献として以下をご紹介していただきました。

池尾和人(2010)『現代の金融入門』ちくま新書

松井彰彦(2010)『高校生からのゲーム理論』ちくまプリマー新書

大森泰人(2007)『金融システムを考える』きんざい 

 

(※1)野口悠紀雄(2002)「1940年体制」東洋経済新報社 参照

以上が第1部の内容です。

 

第2部では、妹尾社長を含め参加者が3つのグループに分かれて、「貯蓄から投資へ促進するためには」についてディスカッションを行いました。様々なことが議論されましたが、キーワードとしては「金融教育」と「投資をするインセンティブは何か」の2つが挙げられます。

 

 一つ目の金融教育については、そもそも金融知識がないために日本では貯蓄が投資へ回らないといった点が議論されていました。そうすると「では、どうすれば金融教育がもっと盛んに行われるのか」という論点が必然的に出てきます。挙げられたものとしては、「実際に投資を行ってみる」「人々に金融に興味を持ってもらう」等がありました。

 

二つ目の「投資をするインセンティブは何か」については、特に妹尾社長がご興味をもたれているテーマでした。参加者の皆様からは「預金利息の低さ」「将来に対する備え」「投資をすることで企業を応援したい」「経済の成長を促すため」等の意見があり、具体的な投資対象としては株式や投資信託等、中にはソーシャルレンディングを挙げられる方もいらっしゃいました。

 

第1回目の金融デザインセミナーでは、ソーシャルレンディングだけに留まらず日本の姿、日本の金融の姿をも妹尾社長にお話していただき、ディスカッションでは参加者の皆様と「投資への促進」について議論することが出来、まさにFEDのミッションである「未来の金融をデザインする」にふさわしい内容となりました。

 

本セミナーを通して「未来の金融をデザインする」ためには、まずは現状の金融を正しく認識した上で、経済のパフォーマンス改善につながるような金融のあり方を議論する必要があると、改めて感じた次第です。

 

現在はソーシャルレンディングを初め、ネット金融やマイクロファイナンス等、新たな金融が続々と誕生してきています。FEDでは、今後もこれらの金融の姿を日々アップデート出来るような勉強会や読書会、そしてセミナーを開催していく予定です。そして、これらの会を通して、理論と実務をバランスよく学べる場を提供することで、日本の金融教育に貢献するとともに、今回のディスカッションのテーマであった「貯蓄から投資へ促進」する方法を考えていくことで、経済パフォーマンスが改善するような資金の流れを作っていければと考えております。

 

(2011年5月9日更新)