2011年7月9日に開催した第2回金融デザインセミナーでは、金融クラスタの間でブログやツイッターが評判のYoshi Noguchiさん(以下、「野口さん」)をお招きし、政府のバランスシートについてお話していただきました。本セミナーの詳細については、野口さんのブログ(http://d.hatena.ne.jp/equilibrista/20110709/p1)にも書かれていますので、ここでは、セミナー開催までの流れと当日のセミナーの感想及び野口さんを交えての全員参加のディスカッションをレビューしたいと思います。

開催までの流れ

 野口さんとは今から1年半ほど前にtwitterで少しだけからませていただく機会があり(ちなみにそのときには「金利は市場で決まります」という私のつぶやきに対してNPOLiving in Peace代表の慎さんが野口さんをご紹介してくださるというコンテキストでした)、その後ブログも読む機会があったのですが、直接の面識はなく、Web上に存在していらっしゃる金融マーケットにものすごく長けているプロフェッショナルという印象がありました。 そんな中、今年の4月に友人に飲み会に誘われて参加した際に、野口さんがいらっしゃり、FEDの目的をお話をするとともに、ご講演をお願いしましたところ、ご快諾していただき、「財政」をテーマに第2回金融デザインセミナーが開催することとなりました。


  FEDのミッションは「未来の金融をデザインする」ですが、財政もやはり金融の側面を持っていますし、日本自体財政赤字、世代間の負担の格差等といった大きな問題を抱えていることもあり、未来の金融を考える上ではまさにうってつけのテーマとなりました。また、ちょうど7月にはロゴフ・ラインハート著「国家は破綻する」の読書会も実施する予定だったので、野口さんのセミナーと合わせて、7月は「FED財政強化月間」としました。


 今回のセミナーの募集はFEDのHP、facebook、mixiそしてtwitterから行ったのですが、ほとんどの方がtwitter経由でのお申込みとなり、また多くの方がFED初参加となり、twitterでの野口さんの影響力を改めて実感しました。ご講演では、twitterやブログでのクールな語り口調に加えての非常にフランクでわかりやすいご説明、そして常に笑いにあふれるプレゼンテーションで一、気に会場参加者の雰囲気をつかんでいたのが印象的でした。内容自体は決して簡単ではないのですが、シンプルな表現と思い切った捨象で本質を見極めた解説で、政府の財政についてイメージを持てるようになりました。

 

ディスカッション内容

  後半では、野口さんのご講演を踏まえた上で2チームに分かれて「日本国債はデフォルト(債務不履行)するのか」をテーマに全員参加のディスカッションを実施しました。論点としては以下のことが挙げられました。・国内の金融資産と財政赤字のバランスを考えれば後4~5年ぐらいで国債はデフォルトすると言われてるが、その説明が一番しっくりと来る。・国債がデフォルトすることはまったく考慮に入れていない。・マーケットの立場から見ると、国債は非常に安定的に消化されていて、金利の上昇の懸念も低いことから、マーケット側からはデフォルトは織り込まれていない。・国債がデフォルトした場合、インフレが起こる可能性が高い。それならば、現時点から
インフレターゲットを実施し、実質債務を減少させてもいいのでは。・仮に国債がデフォルトした場合を企業の倒産に当てはめて考えてみると、国債のデフォルト→金利の上昇、債務の一部カット→国債を保有している銀行や保険会社が損失を被る→金融危機が起こる→金融危機回避のために公的資金の注入が必要→国債がデフォルトしているので、日本政府では不可→IMFの介入、という流れになるのではないだろうか。


  参加者の全体としては国債はデフォルトするのではないかという人の方が多かったです。ですが、国債デフォルトを前提にするのではなく、やはりできる限り国債のデフォルトを避けるよう努力が必要だと思います。そのためにはどうすればいいのでしょうか。一つ考えられるのは、今回野口さんがご説明してくださったプライマリーマルチプルおよびそれの発展系でありAPTの考えを応用したバランスシートの捉え方です(http://d.hatena.ne.jp/equilibrista/)。この考え方を身につければ、未来の政府の資産と負債を織り込んだ財政赤字を議論することが出来ます。

 

まとめ

 最後にまとめとして今回の学びを書かせていただきます。繰り返しになりますがFEDでは「未来の金融をデザインする」ことを目標に活動を続けています。今回の財政赤字の問題はまさに「未来の金融をどうデザインするか」にかかってきます。と同時に未来の金融だけではなく、未来の日本のあり方及び国民生活のグランドデザインも必要となってきます。例えば、社会保障に関して言えば、制約を認識した上でどういった国民生活を想像して設計するかが重要となってきます。


 今まで我々は「未来の金融をデザインする」という問題意識を持って活動をしてまいりましたが、その表裏一体である「未来の社会のデザイン」をしなければそもそも「未来の金融のデザイン」なんてことは出来ない、というあたり前のことに改めて気がつかされました。 今回のセミナーを通して、今後活動していく上では今まで以上にしっかりと今の現実を見つめて、未来の経済活動をイメージしながら「未来の金融のデザイン」が必要だと感じました。現実を見ていると、サブプライムローンのように未来の経済社会のデザインがないのに、あたかも未来の金融のように金融イノベーションを標榜してしまった結果が、金融危機となっています。このような危機を繰り返さないためにもFEDでは、現実の社会をきっちりと踏まえ、未来の社会を見据えた上で「未来の金融のデザイン」をしていきたいと思います。日本の財政赤字の将来を考えていく中で、そのようなことを感じました。